子どもの頃から、白いモクレンの花が大好きで、いつの日か庭に植えたいというのが夢でした。
毛皮のコートの下に爽やかな白のブラウスを着て、首もとに黄色のスカーフを巻いたお洒落な都会の女性のようなこの凛とした白木蓮。
なんと、こちらに引っ越してきて勤め始めた職場に、モクレン並木がありました。
7月。
まるで果実のような、一握りもある実がたわわに実っています。
11月も半ば。その実がたくさん落ちていました。もしかするとこれは植えると育つかもしれないと、一つ頂いて帰りました。
虫や動物にとっては、食糧になるのかな。
赤いきれいな実。
5月。
奇跡が起きました。
スクスク育って、7月。
たくさん芽を出しました。
無知だった私は、実家の母にもあげたいと、1本だけ残してポットに移して育てようとしました。しかし、それは全て、数日で萎れてしまいました。
そうなんです。後から本を読んでみると、モクレンは植え替えると枯れてしまうということなのです。芽を出したそこから、絶対に動かしてはいけないのです。
それなのに・・・。お隣のイカレポンチになってしまわれたお爺さんが、うちの庭に不法侵入(笑)して、私の大事な大事な夢の木蓮の木を勝手に引っこ抜いて、ご丁寧にも別の場所に植え替えなさったのです。お盆の帰省中に起こった出来事でした。
それから一週間が経ちました。
元気に、1年で120cm程にも成長した木蓮は、葉がこげ茶色に変色し、悲しげにピンと立っています。
可哀想に・・・・・。
田舎は、土地が広いからか放ったらかしに育てるので、モクレンのような木は、手をつけられないほどの巨木になるのかもしれないけど、街では、狭い庭の塀の片隅にキチンと剪定されて大きさを保った美しい庭木として家々に存在している。
植物は、手をかけてやれば(込み合った葉や枝をこまめに取り除いてやるとかすれば)害虫もつかないし、愛してやれば、こちらの思いの通りに枝をのばしてくれるのに。
ごめんね、モクレン。
この庭が始まって一番の悲劇でした。